竹達さん、今日はお忙しい中お時間をいただき、ありがとうございます。まず最初に聞きたかったんですが、いつから下宿を始めたんですか?
お父さん 1998年、1名を北星余市から受け入れたんだよね。うちの子どもたちが家から出ていったので、余市の地域に役に立ちたいと思って下宿として始めた。最初は他人様の子どもの面倒をみるのは不安もあったんだけど、その子がちゃんと卒業していったので何人か置いてみようと気持ちを固めて、下宿を始めた。現在は5名下宿しています。
そうだったんですね、ちなみに子どもを受け入れて接する中で大切にしていることはなんでしょうか?
お父さん その年によって全然違う子たちが来るから、去年と同じ対応をすればよいわけにはいかないんですね。その子どもによって対応を変えていくというのをすごく大切にしています。家内は優しく対応をすることもあるから、僕が叱るときは叱ることもあるし、じっくり話し合うこともある。
奥さん 私たちは「先に子どもの話を聴く」ということを軸に置いています。一方的に伝えても全然伝わらないので、そこをすごく大切にしているんですね。押し付けがましいことはできる限りしないようにはしています。あと、子どもたちが食事をしているタイミングが結構大切で、そのときに話を聞いたりします。
お父さん 子どもたちとじっくり話す時間はそのままでいると、意外に少ないんですね。帰ってきたら部屋にすぐに入るとか、進学望む子は勉強しているし、遊びに行く子はスノボで遊びにいったりとか、行動はみんなばらばら。みんなでじっくり話す時間があるのは、割りと少ない。だから、じっくり話をするために、食事のときとか、食事の後とかにダイニングに呼んでゆっくり話すようにしているんです。
話はどんな話をすることがあるんですか?
お母さん 今日学校で何があったとか、友達がどうしたとか、そういう日常的な会話から、ちょっとやらかしてしまって先生に指導されたとか、そんな話まで色々です。真面目な話をするときも多いですよ。真剣に向き合って話をしていると、どうしても言葉も強くなりがちになったり、荒くなったりするから、「憎たらしくていっているわけじゃないんだ、おまえのことを考えているんだ」と思いを込めているし、それを伝えることもあります。
お父さん 表面的であったり、一時的な対応をしても、それじゃ通じないことがありますよね。でも、入学当初から寝食を共にしながら関わったりするので、長い付き合いのなかでお互いに理解しあっていく。そういう中で良い関係になっていくんです。それで卒業までに少しでも変わってきてくれたらすごくいいと思うんだよね。本人にとってはすごく厳しかったとか、「うるさいなぁ」とかいうことはあるのかもしれないけれど。
奥さん だけど、卒業して帰ってきた時に卒業生が「や、おばちゃんね、卒業してから誰も叱ってくれる人がいないから、今では嬉しいよ」といってくれていたのは嬉しかったですね。
なるほど、そういった卒業生とかも帰ってくる場になっているんですね。
お父さん 結構卒業生がきてくれることが嬉しいですよ。
奥さん このまえも卒業生がきてくれていたので、そこで近況を話してくれるのが嬉しいですね。
最後に、ここ北星余市には多くの寮生が存在すると同時にそれを送り出す保護者さんがいます。何か保護者さんに伝えたいこととかあってありますか?
奥さん 親御さんも大切な子どもを家から離すということは、いろんな心配事もありますよね。正直なことをいえば、親御さんに「100%安心してくださいね」と言いたいところですが、そんなこと軽くは言えないんです。けれども「なんとか卒業まで持っていかせたい」とこっちの想いがあるので、「私たちに任せてもらえないですか」という思いですね。それがうちの素直な気持ちです。
そして、家から離すとなると、親としての色々な負担もあると思うんです。けど、子どもがこっちでがんばろうと思ってやっていたら、親としてもがんばれるものだと思うんですよね。子どもも頑張る、親も頑張る、私たちも頑張る、みんなで頑張りあって、いろんなことが少しずつよくなっていくようにしたいと思っています。
お父さん 親御さんのところから離れて3年間、下宿生活するわけですよ。その中で、ものすごくすぐに劇的に変わるということはないんですけど、親と子どもの間っていうか、関係っていうか、そこのところが下宿生活をする中でプラスになっていく部分ってあると思います。なぜかっていうと、親子関係って、近くにいると、親も子どももわがままになりますよね。遠慮無く好きなことを言い合う、そうすると意見の食い違いも出てくるし、感情的にもなる。この下宿生活だとワンクッションがあるわけだから、同じいろんなことを注意とか話をしても、素直にきけるようになってくるんですよ。これが親子だとなかなかうまくいかないことがある。そこらへんは、子どもたちと接していて感じるんです。そういうケースをたくさんみてきていますね。色々な不安もあると思いますけど「そういうこともあるんだ」ってことは知っていただきたいですね。